「きらきら」




「何とか言えッてンだよ!」乱暴な口ぶりで言い、力をくるんでおけなくなった阿部の身体はいらだちのなすまま、 そばのパイプ椅子を蹴り上げた。がしゃん、と神経質な音が部屋の四角に響き、椅子は教室の隅まで転げる。 三橋は肩を抱くみたくして竦めて、そのままずるずると膝を突いてしまったかと思えば、 怯えてちいさく丸まってしまった。拉致があかない。阿部は聞こえよがしに溜息を吐き、 さっき蹴り上げたパイプ椅子を拾い上げると、再び組み立て、どか、と腰掛けた。 「…何とか言え、」そうして低く、繰り返す。そろそろと顔を上げた三橋の目は案の定、 赤く充血している。意を決したようにこちらを向き、睨め付ける、眸からひとすじ水が溢れた。 「もう、」震える声で三橋は言う。「呑ん、じゃたも、ん。」「あ?」 「い、言お、としてたッ、のに阿、部く、が…、」嗚咽に掠れて、まるで声の所々にスラッシュが入るみたいだと、 阿部は思う。のんじゃった、と三橋は言う。言葉は、口の中に準備していたのに、阿部が急かすものだから、 飲み込んでしまった、と。思えば馬鹿げた言いがかりで、それでも、阿部は、感情を映して、 きらきらこちらを睨む三橋の眸に胸が上擦る。きらきら、 は窓から漏れ零れる陽差しを散らす涙の反射なのかも知れなかった。けれど、 きらきらと溢れ出すひかりは眸の感情そのまま、怒りを灯すみたいで、ひどく、きれいだった。それに惹かれるみたく、 パイプ椅子から立ち上がると阿部は、三橋に手を伸ばす。「…何処に隠したッて?」 「呑んじゃッたか、ら最うな、いよ!」「口ン中?」「喉、の奧だッ、よ」もう、でてこない、よ、と。 得意げに、べろり、舌を出して見せ、言い放つ三橋の口を塞ぐふうに噛みついた。悲鳴も飲み込む乱暴なキス。 くちびるの奧に舌があり、その奧に言葉隠れているはずである。簡単だ。有無を言わさず舌を差し込み、 三橋が喉の奧に隠したと言う言葉に手をのばすみたく、暴き立てた。目の端で、新たにこぼれた涙がきらきら、煽る。 瞬きを繰り返しているのだろう、三橋の、睫毛が膚に触れて、そわそわ、こそばい。唾液と嗚咽にまみれたまま、 つかのま阿部が舌先で触れた言葉は、甘すぎて、触れた途端にたちまち、ちかちかと溶けた。 刹那の熱は蝶結びのそれのように、するり、と解ける。何処かでとぼけたチャイムが鳴った。







理不尽なスピードで。



ニッキより。落書きです。(2/20)